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原状復帰とは?原状回復との違いや退去時の費用の考え方・区分

原状復帰とは?原状回復との違いや退去時の費用の考え方・区分

賃貸物件を退去する際、「原状復帰」や「原状回復」という言葉を目にすることがありますが、意味や費用負担の考え方を正確に理解できていない方も多いのではないでしょうか。実際には、経年劣化や通常消耗なのか、故意・過失や手入れ不足による損耗なのかによって、貸主負担か借主負担かが変わります。

当記事では、原状復帰の意味や原状回復との違いを整理した上で、退去時の費用負担の考え方と、床・壁・天井・建具・設備など場所ごとの負担区分を分かりやすく解説します。

【この記事はこんな方におすすめです】

  • 原状復帰と原状回復の違いを知りたい方

  • 退去時の修繕費をどこまで負担するのか不安な方

  • 経年劣化、通常消耗、故意・過失の違いを整理したい方

原状復帰とは?

原状復帰とは、トラブル対応や変更作業の場面で、作業前の状態や現在の安定した運用状態に戻すことを指す言葉です。現状復帰と記載される場合もありますが、一般には「今の状態に戻す」という意味で使われます。

たとえば、障害対応の途中で、いったん現在の運用状態に戻す場合や、設定変更や更新作業のあとに不具合が見つかり、作業開始時点の構成や設定に戻す場合などが該当します。元に戻す対象はシステム設定、データ、運用手順などさまざまであるため、どの時点の何を元に戻すのかを明確にして使うことが重要です。業務では、手順書にもよく記載されます。

原状復帰と原状回復の違い

原状復帰と原状回復は、似ていても意味が異なります。原状回復は、国土交通省のガイドラインで、賃借人の故意・過失や善管注意義務違反、通常の使用を超える使い方による損耗や毀損を復旧することと定義されています。つまり、賃貸住宅の退去時に問題になる修繕負担の考え方を示す用語です。

(出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」/

一方、原状復帰は、システム運用や作業の現場で、変更前や安定していた状態に戻す意味で使われます。住まいの修繕責任を示す言葉なのか、運用や作業を元に戻す言葉なのかが違いです。両者は使う場面も意味も異なるため、混同しないことが重要です。

退去時の原状復帰(原状回復)の費用負担の考え方

2020年4月施行の民法改正で、賃貸借における原状回復の考え方が明文化されました。退去時の費用負担は、経年劣化や通常消耗か、故意・過失などによる損耗かで分かれます。ここでは、負担区分の考え方を解説します。

経年劣化

経年劣化とは、建物や設備が時間の経過によって自然に古くなり、価値が下がることです。国土交通省のガイドラインでは、日照によるクロスの変色、畳や設備の自然な老朽化などが該当し、原則として貸主負担とされています。

経年劣化による修繕費は、通常の維持管理費として賃料に含まれる考え方が基本であり、退去時に借主へ原状回復費用として請求しないのが一般的です。費用負担を判断する際は、借主の使い方ではなく、時間の経過による自然な変化かどうかが基準になります。

通常消耗

通常消耗とは、日常生活の中で普通に部屋を使うことで生じる損耗を指します。国土交通省のガイドラインでは、家具の設置による床やカーペットのへこみ、家電の設置による壁の黒ずみなどが例として挙げられており、原則として貸主負担です。

通常消耗に当たる部分は賃料に含まれる維持費の範囲と考えられ、退去時に借主へ原状回復費用として請求しないのが基本です。ただし、契約で特約があり、内容が明確で合意もある場合は扱いが変わることがあります。 

故意・過失、善管注意義務違反等による損耗等

故意・過失、善管注意義務違反などによる損耗は、借主負担になるのが原則です。国土交通省のガイドラインでも、引っ越し作業で付いた傷、結露を放置して広がったカビやシミ、落書き、ペットによる傷などは借主負担の例として示されています。

ただし、請求できる費用は常に修繕費の全額ではありません。設備や内装の経過年数、残存価値、損耗した範囲などを踏まえて、借主の負担額が決まります。部分補修で足りる場合は、その範囲に限って費用が算定されます。

退去時の原状復帰(原状回復)の負担区分と費用

退去時の原状回復では、損耗の内容によって賃借人負担か賃貸人負担かが分かれます。国土交通省のガイドラインでも、床、壁・天井、建具、設備などごとに負担区分の考え方が示されています。ここでは、部位別の費用負担を順に解説します。 

床の負担区分は、通常の使用で生じたものか、手入れ不足や不注意によって生じたものかで判断されます。主な例は次の通りです。

■賃貸人負担の例

  • 畳の裏返し、表替え
  • 家具の設置による床やカーペットのへこみ、設置跡
  • 日照や建物構造上の問題による畳の変色、フローリングの色落ち

■賃借人負担の例

  • 越作業で生じたひっかきキズ
  • こぼした飲み物を放置したことによるカビ
  • 冷蔵庫下のサビを放置して生じた床の汚損

床は、生活していれば自然に生じるへこみや色落ちは賃貸人負担になりやすく、汚れやサビを放置して傷みが広がった場合は賃借人負担になりやすいです。まずは通常損耗か、管理不足による損耗かを分けて考えると整理しやすくなります。

壁・天井

壁・天井は、生活の中で自然に生じる変化なのか、それとも掃除不足や無断設置によるものなのかで、負担区分が分かれます。主な例は次の通りです。

■賃貸人負担の例

  • テレビや冷蔵庫の後部壁面の黒ずみ(電気ヤケ)
  • 壁の画鋲、ピン等の穴

  • ポスターやカレンダーによるクロスの変色

■賃借人負担の例

  • 台所の油汚れを放置したことによるススや油の付着
  • 照明取付用金具のない天井に、承諾なく照明器具を直接付けた跡
  • 落書きなど故意による毀損

自然に生じる黒ずみや軽微な穴、日常生活の範囲の変色は賃貸人負担になりやすく、掃除不足や無断設置、故意による損傷は賃借人負担になりやすいと整理できます。

建具

建具は、自然災害や経年によるものか、入居者の使い方によるものかで負担区分が分かれます。主な例は次の通りです。

■賃貸人負担の例

  • 破損していない網戸の張替え
  • 地震で破損したガラス
  • 構造上の理由で自然に生じた網入りガラスの亀裂

■賃借人負担の例

  • 飼育ペットによる柱などのキズ、臭い
  • 落書きなど故意による毀損
  • 不注意で建具を破損させた場合の傷や破れ

建具では、自然災害や構造上の問題、入れ替え時の維持管理にあたるものは賃貸人負担になりやすく、ペットによる損傷や故意・不注意による傷みは賃借人負担になりやすいと考えられます。

設備、その他

設備やそのほかの項目は、通常の使用や経年によるものか、手入れ不足や不適切な使用によるものかで負担区分が分かれます。主な例は次の通りです。

■賃貸人負担の例

  • 破損や紛失のない鍵の取替え
  • 通常清掃が行われている場合のハウスクリーニング
  • 機器の寿命による設備故障、使用不能

■賃借人負担の例

  • 鍵の紛失、破損による取替え
  • ガスコンロ置き場や換気扇の油汚れ、すす
  • 風呂、トイレ、洗面台の水垢、カビ

設備やそのほかの項目では、自然な劣化や次の入居者のための維持管理は賃貸人、日常の掃除不足や不適切な使用で生じた汚れや損傷は賃借人、と整理すると分かりやすくなります。

まとめ

原状回復の費用負担は、すべて借主が負うわけではなく、経年劣化や通常消耗は貸主負担、故意・過失や手入れ不足による損耗は借主負担になるのが原則です。床、壁・天井、建具、設備なども、自然に生じた変化か、管理不足や不適切な使用によるものかで判断されます。

退去時のトラブルを防ぐには、「原状復帰」と「原状回復」の違いを理解した上で、国土交通省のガイドラインに沿って負担区分を確認することが大切です。請求内容は感覚ではなく、損耗の原因や範囲に基づいて整理して考えましょう。