故人が生前に身につけていた服を前に、捨てるべきか、着てもよいのか悩む方は少なくありません。特に「風水的に悪いのでは」と心配になることもあるでしょう。風水では、亡くなった人の衣類には陰の気が宿るとされ、運気への影響を避けるため慎重に扱うべきと考えられています。一方で、スピリチュアルや日本の宗教観では、故人の思いを大切に受け継ぐ行為と捉える場合もあります。

当記事では、風水・スピリチュアル・宗教的視点から見た意味や、服の処分の時期や方法について解説します。

亡くなった人の服を着るのは風水的に良くない？

亡くなった人の服を着ることは、風水では避けるべきとされています。風水を気にする場合は、たとえ状態が良くても着用は控えたほうがよいでしょう。着ることで運気に悪影響があると信じられているため、丁寧に処分や供養を検討することがすすめられます。

以下では、風水的によくないとされる理由を2つ紹介します。

死者の念が宿るため

風水では、亡くなった人が生前に身につけていた衣類には、その人の「念」が宿ると考えられています。この念は、残された人が衣類を着ることで影響を受け、運気が乱れたり、体調を崩したりする可能性があると言われています。特に、故人に強い感情や未練があった場合、その念が服に深く刻まれているとされ、着用することでその影響を引き継いでしまうおそれがあります。

そのため風水では、故人の衣類を無理に活用せず、感謝の気持ちを込めて丁寧に手放すことが、故人への供養となるとされています。大切なのは、残された人の生活に悪影響が及ばないよう、適切な形で遺品と向き合うことです。

陰のエネルギーがあるため

風水では、亡くなった人は「陰のエネルギー」を帯びているとされており、その人が着ていた服にも陰の気が宿ると考えられています。このような服を生きている人が身につけると、本来備わっている陽のエネルギーが弱まり、運気の低下や体調不良、思わぬ不運を招く可能性があると言われています。

そのため、たとえ思い入れのある服であっても無理に活用せず、感謝の気持ちを込めて処分することが風水的には望ましいとされます。

亡くなった方の服を着るスピリチュアルな意味

亡くなった方の服を着ることには、風水だけでなくスピリチュアルや宗教的な観点からも意味があるとされます。運気や念に関する考え方は、それぞれのジャンルで異なるため、慎重に受け止める必要があります。

以下では、スピリチュアルと日本の宗教観における解釈について解説します。

スピリチュアルにおける考え方

スピリチュアルの観点では、故人の服にはその人の波動や思念が残っているとされます。一般的には、故人が他界した時点で遺品は役目を終えるため、感謝を込めて手放すことが供養につながるという考え方があります。一方で、関係が良好だった故人の遺品には、プラスの波動が宿り、身近に置くことで守護霊のように持ち主を見守ってくれるという説もあります。

そのため、故人との思い出が強く残る品は、浄化を行った上で大切に残すことも可能とされます。特に、晴れた日の午前中に太陽の光を当てることで、波動を整える効果があると信じられています。

日本の宗教観における考え方

日本には、万物に魂が宿るとされる「八百万の神」の考え方があり、遺品にも魂があるとされます。そのため、亡くなった方の服を着る行為は、故人を偲び、思いを引き継ぐ供養の一環と捉えられます。「形見分け」も同様に、魂や記憶を共有する行為として尊重されてきました。

ただし、遺品をすべて残すと気持ちの整理がつきにくいこともあるため、必要な品だけを選び、大切に使うことが望ましいとされています。

亡くなった方の服を処分する時期の目安

亡くなった方の服を処分する時期には決まりはありませんが、親族が集まる四十九日や一周忌などの法要にあわせて行うと、形見分けの相談や同意が得やすくトラブルを防げます。衣類の状態が良ければ親族に譲ることも可能なので、事前に分類しておくとスムーズです。

一方で、賃貸物件に住んでいた場合は、家賃や契約の関係で早めの処分が求められることもあります。戸建てでも空き家状態が長引けば固定資産税や防犯面のリスクが増します。

急ぐ必要がない場合は、手続きが一段落し、気持ちの整理がついてから始めても問題ありません。ただし、長期間放置すると整理が負担になるため、おおまかな時期を決めておくとよいでしょう。

亡くなった方の服を処分する方法

遺品整理の中でも、故人が生前に着ていた服の処分は多くの方が悩むポイントです。感情的な負担も大きいため、無理のない方法で手放すことが大切です。以下では、服を処分する際の主な方法について解説します。

自治体のゴミとして出す

故人の衣類を処分する最も手軽な方法は、自治体のルールに従って家庭ゴミとして出すことです。多くの自治体では、衣類は「可燃ゴミ」や「資源ゴミ」として扱われています。ただし、衣類の素材や付属品によって分別方法が異なる場合もあるため、必ず事前に自治体のホームページや配布されているゴミ分別表を確認しましょう。

大量に処分する場合は、自治体の粗大ゴミ回収やクリーンセンターへの持ち込みを検討するのも1つの方法です。処分前には、ポケットの中や衣類の中に貴重品が残っていないかも忘れず確認しましょう。

リサイクルショップに売る

故人が愛用していた衣類の中に、状態の良いものやブランド品が含まれている場合は、リサイクルショップへの持ち込みを検討してみましょう。再利用されることで、故人の思い出の品が誰かに大切に使われる可能性があります。リサイクルショップによっては出張買取や宅配買取に対応しているところもあり、まとまった量がある場合にも便利です。

ただし、衣類の季節性や流行によって買取価格が大きく変動することがあるため、売却するタイミングも重要です。思い入れのある品をただ捨てるのではなく、次の持ち主へつなぐことで、心の整理もしやすくなるかもしれません。

業者に回収してもらう

自力での遺品整理が難しい場合や、衣類の量が多くて手がつけられないときは、遺品整理業者や不用品回収業者の利用がおすすめです。プロの業者であれば、作業時間の短縮だけでなく、適切な分別やリユース・リサイクルにも対応してくれる点がメリットです。中には、供養付きの回収プランを提供している業者もあり、精神的な負担を軽減しながら作業を進めることができます。

料金体系は業者によって異なるため、複数社から見積もりを取り、信頼できる業者を選びましょう。また、回収後の処理方法についても事前に確認し、納得のいく形で遺品を手放すようにしましょう。

お寺や神社で供養してもらう

故人の衣類に強い思い入れがある場合や、処分に抵抗がある場合は、お寺や神社での供養を通じて心を整理する方法があります。衣類などの遺品は単なるモノではなく、故人の生きた証として魂が宿っていると考える方も多く、供養によってその魂を鎮める意味合いがあります。

供養は、仏教では「遺品供養」、神道では「お焚き上げ」として行われ、読経や祝詞ののち、丁寧に焼納されます。供養を受け付けているかどうか、また方法や費用については、事前に各寺社に問い合わせることが必要です。形見分けとは別に、一定の気持ちの区切りをつけたい場合にも適した方法と言えます。

団体に寄付する

故人の衣類がまだ十分に使える状態であれば、支援団体や福祉施設などに寄付するという方法もあります。寄付を受け付けている団体の中には、被災地支援、生活困窮者支援、海外支援などに活用しているところもあり、故人の遺品が社会貢献につながります。

ただし、汚れや破損がある衣類は受け付けてもらえない場合があるため、事前の選別や洗濯などの配慮が必要です。団体によっては郵送での受付や、直接持ち込みを求めるケースもあります。受付可能な品目や条件、送付先住所などは団体ごとに異なるため、事前に公式サイトや窓口で確認しましょう。処分に悩む衣類を、感謝の気持ちとともに新たな役立て方につなげられる選択肢です。

まとめ

亡くなった方の服には、風水やスピリチュアル、宗教的な意味が込められているとされ、処分や活用の仕方に悩む方も少なくありません。着用するかどうかは自身の気持ちや考え方を大切にしながら判断し、無理なく向き合うことが大切です。

処分する場合も、自治体のゴミに出したり、リサイクルショップに売ったり、業者に回収してもらったりなどさまざまな方法があります。気持ちに整理がついたタイミングで、感謝の心を込めて精神的・身体的に負担のない形で丁寧に手放すようにしましょう。